無断欠勤をよくする男がいました。
彼は自分が スーパーマンだという妄想に駆られていたので
地球の危機を 寝起きに感じると会社を休まないといけない、と思うのでした。
その男は 妄想癖がことさら強いというだけで 特に身体的にはごく普通の腕力や知能しかもちあわせていなかったので 実際はスーパーマンではなかったのです。
男は いつものように その日 朝おきると「地球の危機」を感じたので
とりあえず 会社を休んで家で待機することにしました。
さて、これまた男が住んでいるところから 2キロくらい離れた肉屋の2階にある女が住んでいました。
女は 自分のことを魔女だと思っている これまた妄想癖の強い女でした。
女は 自分は20才になったら地球を滅ぼさないといけない、と思ってはいたのですが
まだ19才なので具体的には何もしませんでしたし、身体的には普通の、おっぱいが人よりは大きいだけのごくごく健康的な女でした。
で、二人はとりあえず 会うこともなく 平穏に 暮らしていたのですが
あるおだやか日の午後3時に、地球のほとんどが 消し飛んでしまったのです。
原爆か、隕石か、そんなこともわかりません。
科学者もほとんど死んでしまったし、いきなりだったもので。
ところが運がいいのか悪いのか さきほどの妄想癖の強い男女が生き残りました。
男は とぼとぼと道をあるいていると
これまたとぼとぼと歩いている女と会い
「地球を守れなかったよ」といい、
女は「私がやろうと思ったのに先に滅ぼされちゃったわよ」といい、
ひとしきりお互い泣いた後
お互いの目的も もうなくなってしまったので
好きな映画の話やら 音楽やらの話もして
意外と趣味があうことがわかり、
なんとなく一緒に住むことになりました。
お互い 大きな目的はなくなってしまったようなのですが
地球のことを考えているより 今、二人は 自分たちの子供の教育について
より真剣に考えているそうです。